リケ女ママの特許翻訳
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ヒルドイドソフト軟膏0.3%の対応特許について調査してみる

(2017年11月25日)
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ここ数年、何かと話題のヒルドイド。
最近は人気すぎて、美容目的の処方が急増し、医療財政を圧迫しているそうですね。

こんな状態になるなんて・・・・。
本当に必要な人に影響が出たりしたら、困ってしまいますね。
製造販売するマルホ株式会社さんも困っているようで、
2017年10月18日付で↓を出しています
ヒルドイドの適正使用に関するお知らせ

ヒルドイド、うちの二人の子供も赤ちゃんの頃から大変お世話になっています。
ヒルドイドはラインナップとしては、
●ヒルドイドクリーム0.3%
●ヒルドイドソフト軟膏0.3%
●ヒルドイドローション0.3%
があり、よく処方されるのは、ソフト軟膏とローションでしょうか?

我が家も赤ちゃんのころは、ヒルドイドローションをよく使っていました。
荒れてしまった肌でも、根気よく塗っていると、きれいに治り、助けられたことは何回もあります。
ローションはソフト軟膏と比較すると、ベタつきも少なく、赤ちゃんにも適用しやすいものでした。

そして、ヒルドイドソフト軟膏0.3%。

こちらは、特にお世話になりました。
上の子は肌トラブルが多い子だったので、ソフト軟膏を広い範囲に塗ったりしたことも、よくありました。
ローションよりもしっかり皮膚にくっつく印象で、使い心地もgoodです。

そんな使い心地が、ヒルドイドソフト軟膏0.3%の美容目的使用につながっているのでしょうか?

でも、効果・効能など、特許公報にはどんなことが記載されているのか気になりませんか?

現在、ヒルドイドについては、いろんな情報が散乱していますが、このブログでは、まずは、ヒルドイドソフト軟膏0.3%について特許的観点から少し探ってみたいと思います。

 

①ヒルドイドソフト軟膏0.3%の対応特許はどうやって探すの?

 

一昔前、米国では、よく特許製品のパッケージなどに、米国特許番号そのものが表示されていました。
今でも、特許番号を記載したURLがパッケージに記載されていたりします。
(これは、米国特許法287条に関連しますが、その話はまた別の機会に)

しかし、日本では、特許を取得した製品であっても、パッケージなどにその特許番号が記載されていることは少なく、その製品組成など中身を詳しく理解しないと対応特許を探し当てることは困難であることも多いのです。

ヒルドイドソフト軟膏0.3%も製品そのものや、マルホ株式会社さんのウェブサイトから、対応特許の記載を見つけることはできませんでした。

じゃぁどうすれば、製品対応の特許を探せるのでしょうか?

 

②ジェネリック医薬品の発売日をヒントにする

 

みなさんご存知「ジェネリック医薬品」は、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に発売される医薬品です。

そこで、今回は、ジェネリック医薬品の発売日(+簡単な中身の理解)から、先発医薬品の対応特許を探るという方法でやってみたいと思います。

まず、J-PlatPatにてマルホ株式会社さんが権利者に含まれる登録特許の件数を確認↓

 

上記のように、マルホ株式会社さんが権利者として名前が入っている登録特許は48件。
そして、画面の48件の部分をクリックすると下記のようなリストが出てきます。↓

 

48件はボリュームとしては少ないので、1件1件見ていってもいいのですが、
リストには、「出願日」も合わせて記載されているので、それを使わない手はありません。

どういうことかというと、
「ジェネリックの発売日」の少し前に「特許の権利切れの日」がある特許を探すということです。
特許は出願日から20年経過した日付が、最大の権利満了日となります。
なので、ジェネリックの発売日から20年ひいたあたりの出願日のものをさがすということです。

ここで、医薬品に関しては、特許権利期間が最大5年延長される場合もありますが、まずは、出願日から20年というところから目をつけていきたいと思います。
(なければ、さらにさかのぼっていけばいいので)

 

③ヒルドイドのジェネリック医薬品は何でしょう?

 

思い出してみると何年か前、うちの子供が赤ちゃんだったころは、お医者さんからヒルドイドソフト軟膏0.3%を処方されても、薬局でジェネリックをすすめられることはありませんでした。

ところが、あるとき、
「ヒルドイドソフト軟膏のジェネリック医薬品が出たので、どうですか?」
と言われて出されたのが、ビーソフテン油性クリーム0.3%という製品でした。

それを思い出しながら、

マルホ株式会社さんのヒルドイドソフト軟膏0.3%
のジェネリック医薬品が
日医工さんのビーソフテン油性クリーム0.3%
になるのかな?と思いながら、ネットで確認をしてみました。

もしも、先発品に対するジェネリック医薬品がわからない場合でも、「(先発医薬品名) ジェネリック」などのキーワードでネット検索すれば、先発品に対するジェネリック医薬品は見つけられる可能性は高いです。

 

※なお、日医工さんのHPで調べたところ、「ビーソフテン油性クリーム0.3%」は旧販売名であり、

現在は

ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「日医工」

という販売名で販売されていることがわかりましたが、ジェネリックのはじめの発売日が知りたいので、

「ビーソフテン油性クリーム0.3%」で検索していくことにします。

 

④ジェネリック医薬品の発売日を調べる。

 

インターネットで調べる場合は、
「(製品名) 発売日」でググったりすれば、探し当てられることが多いです。

そこで、ビーソフテン油性クリーム0.3%の発売日を調べてみると
2013年12月13日
なのではないか?ということがわかりました。

この日付をヒントに、特許の権利期間20年をひいてみます。
(まずは、医薬品の特許権利期間の5年延長は考慮しないでとりかかります)

2013年-20年=1993年

ここでは、1993年12月13日より前の出願日で日付が近いものを、さきほどの表からピックアップして確認していきます↓

 

ここでは、

1993年8月10日が出願日の特許2843957号

と、
1993年10月26日が出願日の特許3047058号
をピックアップします。

ここで、

ぱっと発明の名称のみを見ただけでも、ソフト軟膏を連想させる「特許3047058号(硫酸化多糖含有油中水型乳化組成物)があやしそう」ですね。

そして、ここで、この特許の権利満了日を確認します。
権利満了日を確認するには、↓のように「経過情報」をクリック

 

 

 

すると、下記のような画面が出てきて、権利消滅日を確認できます↓

 

ここで、特許3047058号の権利消滅日は
平成25年10月26日=2013年10月26日
であることがわかりました。
この特許はしっかりと登録後も年金を支払って、大切に大切に出願日から20年という権利を維持した特許なのですね。

そして、権利消滅日がビーソフテン油性クリーム0.3%の発売日2013年12月13日よりも少し前の日付ということで、ますますこの特許がニオイますね。

その「あたり」の可能性を上げるために次のステップへすすみます。

 

⑤先発医薬品の主成分をチェック

 

ヒルドイドの主成分は、「ヘパリン類似物質」です。
仮に、この用語がそのまま請求項に記載してあれば、対応特許も探しやすいのですが、そうそう甘くはありません。

→例:【請求項1】へパリン類似物質を含有する組成物。

でも、請求項には、もっと広い概念で記載されていることが多いものの、明細書の詳細(特に実施例あたり)には、「ヘパリン類似物質」という記載があるかもしれません。

今回は、ピックアップしたものが2件ですし、期待しながら確認してみると・・・・

やはり請求項には記載はありませんが、特許3047058号の実施例に記載がありました!ビンゴです!!
以下、特許3047058号からの抜粋です↓

****************************************************************************
【0022】
尚、実施例で使用するコンドロイチンポリ硫酸は、日本薬局方外医薬品規格(1993)ヘパリン類似物質に基づくものである。
【0023】
(1)スクワラン 15%
(2)セレシン 3%
(3)白色ワセリン 3%
(4)サラシミツロウ 1%
(5)ジグリセリルジオレエート 4%
(6)コンドロイチンポリ硫酸 0.5%
(7)精製水(全量が100%になるように加えた)
比較例1実施例1からコンドロイチンポリ硫酸を除いた以外は、実施例1と同様にして軟膏を調製した。
******************************************************************************

 

【0022】【0023】の記載から「コンドロイチンポリ硫酸」がヘパリン類似物質だとわかります。

そして、この「コンドロイチンポリ硫酸」が何者かというと、これも特許3047058号の明細書内に記載があります↓。
******************************************************************************
【0010】
硫酸化多糖の具体例としては、ヘパリン、コンドロイチンポリ硫酸と呼ばれるコンドロイチン硫酸Dやコンドロイチン硫酸E及びケラタンポリ硫酸等のムコ多糖類が挙げられ、またキチンやヒアルロン酸を硫酸化したものが挙げられ、その他、デンプン、セルロース、グアガム、アラビアガム、コンニャクマンナン、寒天アガロース、アミロペクチンなどの多糖を硫酸化したものも挙げられ、単独でも組合わせでもよい。
*******************************************************************************

 

なるほど、硫酸化多糖の仲間なのね。。
と頭に入れながら、特許3047058号の請求項を確認すると、↓
*******************************************************************************
【請求項1】ムコ多糖の多硫酸化物もしくはその塩を含有する油中水型乳化組成物。
【請求項2】ムコ多糖の多硫酸化物もしくはその塩の濃度が0.05~1.0重量%である油中水型乳化組成物。
*******************************************************************************

 

とあり、「ムコ多糖の多硫酸化物もしくはその塩」が、【0010】【0022】【0023】の記載から、ヘパリン類似物質を含む上位概念であると判断できます。

 

特徴は油中水型であること?

 

あとは、ヒルドイドソフト軟膏0.3%が”油中水型”の乳化組成物であるかどうかですか、

いろいろと調べた結果(これは、ネット検索力を駆使)、ヒルドイドソフト軟膏0.3%は”油中水型”の乳化組成物であろうということがわかりました。

ということで、ヒルドイドソフト軟膏0.3%は、特許3047058号の請求項1の構成要件をすべて満たすものと考えられ、対応特許であろうと判断できます。

もちろん、請求項1をパっと見ただけで、ムコ多糖の多硫酸化物もしくはその塩=ヘパリン類似物質と判断できれば、もっと簡単です。(でも、明細書での定義はきちんと確認してね。)
そのためには、各化学物質がどういうカテゴリに入るのか?どういう上位概念があるのか?を知識として蓄えておくことが重要です。

その知識は、特許侵害調査にも先行特許調査にも役立つことでしょう。

特許3047058号がヒルドイドソフト軟膏0.3%の対応特許であるとすると
「本発明の目的は、温度安定性に優れ、皮膚の保護、保湿や柔軟性の維持等にも優れたW/O型乳化組成物を提供すること」
とあるので、やはり、保湿や皮膚の保護には優れていそうですね。

 

最後に、この特許は”油中水型”の乳化組成物というところが、ミソだと思うんです。

 

というのも、以下のヒルドイドラインナップの中で油中水型なのはソフト軟膏だけで、クリームとローションは水中油型らしいのです。

●ヒルドイドクリーム0.3%
●ヒルドイドソフト軟膏0.3%
●ヒルドイドローション0.3%

もともとヘパリン類似物質を含んだ製品は、随分と昔から発売されており、

ビーソフテンも、油性クリームは油中水型ですが、水中油型のクリームとローションについては、油性クリーム発売前から販売されていたので、成分的に新しいということは言い難い状況です。

ビーソフテン油性クリーム0.3%が販売できなかったのは、特許3047058号(油中水型の・・・・)が存在したためであると推測されます。

そんな状況からも、特許3047058号はヒルドイドソフト軟膏0.3%の対応特許の可能性は高いのではないでしょうか。

 

とりあえず、今日はここまで。

調べ始めたら、元知財部員の血がさわいでおりました(笑)

そして、気が付いたら、長文だわ。

 

 

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